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戸川純×の子(神聖かまってちゃん)インタビュー (『ele-king vol.1』(2011年)より転載)

※このインタビューは「ele-king vol.1」(2011年1月8日発売/メディア総合研究所)から、編集部の許諾の元転載しております。

 

戸川純×の子 (神聖かまってちゃん )
FanxFun@Free Talking 

◎司会 三田格/水越真紀
◎文 水越真紀 

 


 

「戸川さん、もう家を出てます」「の子さんはトイレに」「じゃあ先に入ってましょうか」とドアを開ければ、すでに戸川(ex.遅刻魔)は15分前から待っており、挨拶もそこそこに話が始まったのみならず、録音準備も待たずに話題は即座に核心へ。恥じらいながらも率直にして鋭く、あるいは時空を超えて根源的な、汗と笑いが弾けた至福の2時間を、どうぞっ!

 

の子 この話を振られた時、僕はもうどうしたらよいかと...。今...すごく緊張しています。

 

戸川 えー!

 

の子 緊張してますよ。来る時ずっと、何を話そう何を話そうって。それで最終的にたどり着いたのが、「あ、俺はファンだ」ってところで。

 

戸川 あ、ありがとうございます。

 

の子 いろいろ話したいこととか伝えたいこととかあるんですけど、僕なんか、戸川さんに影響受けて...。

 

戸川 ああ、そういっていただけるとすごく嬉しいです。

 

の子 ほんとにそうです。だからこそいえることはあるんですけど、整理してたら、最終的には「ファンじゃねえか」と(笑)。だからもう素のままでいいやって。

 

戸川 今日は私は初めていうことがあるのよ。

 

の子 ……。

 

戸川 資料・音源いただいて、それを聴いて......。

 

の子 ……。

 

戸川 ファンになりました!

 

の子 えっ!! 

 

戸川 ありがとうございます!こんな気持ちになったのは久しぶりで…。

 

の子 あ、え?いやいや、僕のが大好きですよ!ちょっとちょっと… (笑)。 

 

戸川 あの、今全然そう見えないかもしれないけど・・・ファンになりました。 

 

の子 (笑い続ける) 

 

戸川 ファンになったのにはいろんな要素があるんだけどね。 例えば…。

 

の子 あ、頭真っ白になっちゃった(笑)。あの、僕はいろいろいいたいことが、戸川さんと会うんだ!ということになった時に出てきた。昔、十代の時にゲルニカから聴いて。 僕は戸川さんヴァージョンで歌われた「フリートーキング」に衝撃受けたんですよ。 顔も知らないで音源だけを聴いて。 なんか、可愛らしく歌うところと狂気的に歌うところの混合の割合とかにものすごく衝撃を受けて、そこからどっぷり行ったんです。 『戸川純の気持ち』(別冊宝島84)とか、ヤフーオークションで買ったり。

 

戸川 ええー!!(笑) 

 

の子 ええ。こんなことを本人の前でいってもいいのかな。 

 

戸川 いやいや、うれしいです。私、支持してくださる方に何人かお会いしてきましたけど、自分が好きだって思った若いアーティストの方にいわれるのは、当たり前なことに、やっぱり違いますね、喜びが。今までは「ありがとございます。これからもがんばります!」なんていってたけど、今日は「ほおーんとー!?」とか「ええーーー!!」 とか、 なんかそういう。やってきてよかったとか。

 

の子 (戸惑い笑い)

 

戸川 しかし・・・でぶになって痩せる前にお会いしないで、スタイルがいいとかいわれている時にお会いしたかったですね。 

 

の子 え?そんなことないですよ!

 

戸川 でぶ事情・ケガ事情はご存知? 

 

の子 知ってます。 

 

戸川 なんで知ってんの?

 

の子 え、なんでって、元々戸川さんのことは調べてるんで...。元々ファンなんで。僕は遠藤ミチロウさんと対バンでやった東口トルエンズのライヴに一人で行ったんです。 シモキタで。ハタチか21くらいの駆け出しの頃で。

 

戸川 いやー、私なんてあれは昨日のことくらいの近さなんだけど...私の年代になると早いですよ(笑)。

 

の子 僕からしたら戸川さんは年齢とか関係ないですからね。もう“存在!”ですから。 

 

戸川 ありがとう。トルエンズの時は痩せてたよね、ちゃんと? 

 

の子 いやー、オードリー・ヘップバーンみたいでした。

 

戸川 えっ!!

 

の子 サングラスをしてたんですよね。

 

戸川 そうそう(笑)。いや、ライヴのたんびにでぶ事情・ケガ事情を話しててくどいっていわれるんだけど、でもひとりでも新しい人が来てるかもしれないと思うと話しちゃうんです。腰と足を折っちゃって、運動できなくてって。そこに老人用のシルバーカーがあるんですけど、あれ押して歩いてるの。
で、トルエンズはね、遊びでやってたんです。ぴあとかに告知出さないで、その店にたまたま居合わせたお客さんにってことで。ネットで知ったの?

 

の子 ええ。どうしても戸川さんを一目見たくて。だからその時は遠目に見て「ああっ、戸川だ!」って。 

 

―――戸川さんを知ったのは何歳の時? 

 

の子 17, 18くらい。

 

戸川 今は?

 

の子 25です。だから生まれた時にはもう活動されてて、もう何をいえばいいのかと...。

 

戸川 今日は私がいう立場じゃないのかと...。

 

の子 えっ?あ、あ、僕らはインターネットで売りだしてってるみたいなところあるんです。PVとか、自分で作ってYouTubeとかにあげたりして...。 

 

―――ライヴも全部ネットで中継しちゃうんですよね。 

 

の子 ライヴ中にコメントが飛んで来るんですよ、わーっと。それを...。

 

戸川 見ながら?

 

の子 ライヴ中は全部見ているわけじゃないですけど。でも例えば(パソコンを取り出す)。 

 

―――新しいVAIOですね。 こないだライヴで壊したから(笑) 

 

の子 新しいVAIOです(笑)。こうやって、こうやって(カメラをつけて設置してみせる)。今まではバンドの売名のものとして勢いだけで...。すごい叩かれるんですけど(笑)。 

 

戸川 叩かれそうなところも含めて勇気あるなあ。

 

の子 いや、逃げてます、怖いです。

 

戸川 あ、やっぱり。人並みな...。

 

の子 いや、気分がなぜかガッと上がったときには「ヨシッ!行ってやる」みたいな感じなんですけど、僕は浮き沈みがあったりするんで、 それでもう、沈む時に自分に対する批判的なコメントなんか見ちゃうと顔がやつれて...。

 

戸川 コンピュータを使っているというのはサウンド的にもよく出てますよね。 

 

の子 あ、サウンドも...。曲を聴いてもらってる時点でもう僕は...。

 

戸川 ええ、でもそれでファンになってるわけだから、私も。

 

の子 あ、あ。だ。ど。あ。 

 

戸川 いろんな面で好きなんですけど、まずバランス。バランスというのは落としのバランスもそうなんだけど、歌詞でネガティヴなことをいってても曲がメロディアスだったり、 そういうバランスとか。

 

の子 あ、はい。 

 

戸川 私は矛盾したものが好きなので...矛盾を感じるんですよ、いい意味の。歌詞がネガティヴだったりする面もあるのに最後には爽やかだったり、あるいは歌詞は爽やかなのに最後まで聴くとなんか後味が悪い感じとか。あともっと物理的ないい方をしちゃうと音圧とか。こんだけ入っててくれた方が好き、みたいな。ミックスも好きだし。
私はカセットテープの時代から 「聴いてください」とかってもらうことがあって、でも嫌いとかっていうんじゃなくて、まあジェネレイション・ギャップなのかなあみたいな。内心「ごめんね、ピンとこなくて」みたいな感じで何十年も来たわけですよ。

 

の子 僕は人間から入ったりするんですけど。音楽をやってる人も含めて好きっていうか。戸川さんの音楽が好きだから、戸川さん自身のことも調べていきますし。 

 

戸川 コワイね。 

 

の子 あ、でも戸川さんもそんな方なのかなあ、けっこう見透かされるんじゃないかと思って、俺は今日はありのままの自分で来たんですけど。

 

戸川 なにいってんの(笑)!

 

の子 コワイなんて言われるとは思いませんでしたよ。

 

戸川 ははは。だって、私の場合 「この人、人間的にはサイッ低なんだけど、やってる音楽は好きなんだよなー」っていうのもありますけど。

 

の子 僕は「戸川純の気持ち」から入りましたからね(笑)。

 

戸川 (笑)芸能人をやっててよかったですよ。アイドル本を出してて。

 

の子 よかったですよ。 いまだに僕みたいなヤツの手にも行くわけですよ。多分これからも行きますよ。 僕の下の世代の十代の子とか。 

 

戸川 ははは。 やさしいね。 

 

の子 え!

 

戸川 いい人ですね、の子さんは。

 

の子 え、い、いい人じゃないんです、僕は。よくないんです、ほんとに。いい人とかじゃなくて、レコーディングの時とか最低だし、嫌な音をわざわざ無理やり詰め込んで嫌がらせしたりとか...。 

 

戸川 けっこうそういうもんかも。

 

―――そこが似てる? 

 

戸川 いや、私はしませんよ。

 

の子 (笑)僕は十代の頃とか精神的に乱れがちだったんですけど、そういう時とかはすごく戸川さんから感じ取ってましたから、勝手に。そういう人は当然今でもいっぱいいると思うんですよ。

 

戸川 それがね、「影響を受けました」っていっていただく人の話を聞いて、寂しく寂しくなる時があるの。 
たまにもう「だまらっしゃい!」ってテーブル引っくり返したくなるくらい頭にくる人もいる。「戸川さんに影響受けました」とかいって、やってることは病気自慢の羅列とか。でも、いちばん多いのは、「どこが私と共通してるのかわかんないなあ」っていう人だけど、極端な人はひとりいました。

 

の子 ひとり!

 

戸川 そういうふうにいう人はたいていが不思議ちゃんだけど、私はすごくわかりやすいと思うんですね。例えば「蛹化の女」っていう曲をご存知ですか?

 

の子 はい。

 

戸川 (ジェスチャー付きで)「月光の白き林で、木の芽掘れば、セミの蛹の幾つも出てきし」と、ここで終われば詩なんですよ。でも「それはあなたを想いすぎて変わり果てた私の姿」って説明しちゃってる。なんてわかりやすい!もし「セミの蛹が幾つも出てきし」だけで「私は蛹化の女」っていったら不思議ちゃんかもしれないけど、「それはあなたを想いすぎて変わり果てた私の姿」 って説明してて全然不思議じゃないの。不思議ちゃんの代表とか元祖不思議ちゃんとかさんざんいわれましたけど、説明ちゃんですよ!

 

の子 はははは。

 

戸川 しかも、分かりやすい、聞き取りやすい日本語で。分かりやすいと思うんだけどなあ。これをポップと呼ぶんじゃないかなあとか。

 

の子 ああ、はい。 

 

戸川 それで「これ聴いてください」ってテープをもらった時代から、MDになりCDになり。でも初めてですよ、好きになったのは。

 

の子 えー!そのカセットテープからの歴史でですか?

 

戸川 そう、神聖かまってちゃんは。だから、ほんとにありがとう。

 

の子 え、いや、あ、どど、ははははは。

 

戸川 あのね、感動した。 

 

の子 え、あ、でえええ。いや、でも...いや...戸川さんから汲み取ったものもたくさんあって、うちのバンドがいたりするので......。

 

戸川 だからそんなことをいわれると私の方こそ嬉しいわけですよ。

 

の子 いや、なんというか。僕はゲルニカから入って『玉姫様』を買って、ほとんどヤフーオークションで買ったんです。 

 

戸川 だって生まれた頃だもんね。

 

の子 そうなんですよ。えー、あの、いま、脳みそがどこの国に行っちゃたんだろうって感じになってます。えーとなんの話でしたか。

 

戸川 ヤフーオークションで『玉姫様』。

 

の子 ああ、そうだ。「フリートーキング」です。 「わあ、こんな人いるんだ!」みたいなときめきがありました。(神聖かまってちゃんは)バンドの全部をひっくるめてパンクパンクっていわれるんですけど、僕はどっちかっていうとポップ・ロックみたいのでありたいと思ってるんです。

 

戸川 あー、そこでね、パンク的要素のあるポップ・ロックみたいな感じで受け取ると、あのねえ、おこがましいいい方だけど、私が自分がこうでありたいという感じになる。

 

の子 はあ。

 

戸川 神聖かまってちゃんはどっちが根っこにあってどっちが表層的なのかわかんないけど、とにかくパンクをポップでできるんだ、みたいな。

 

の子 はい。

 

戸川 私の標榜するところとしてそういうものがあるもので。だって全部ずうっとパンクでやるとアルバム1枚おんなじになっちゃう。ライヴ、ヤプーズは1時間45分くらいかな、もたないって。

 

の子 ええ、もたないですよ。僕もギターとか重いんで、重いというのもあれですけど、3曲目くらいには「座れよ」みたいなMCが最近あるんです。「みんな座れ、うるせ!」 みたいな。 

 

戸川 そうなんだ。私の場合、飽き性でね、3曲くらいで座ったりまた立ったり。今はでもケガしてるから座ったままのライヴしかできないんですけどね。だから羨ましいですよ、思い切りやりたい部分を思い切りやれているのは。 

 

の子 はあ。 

 

戸川 例えば「死にたい」の繰り返しにしても、どれだけ私が今までこれをいいたかったろう、みたいな。まあモチーフとして違ういい方にしてるのはありますよ。「五階から飛んだし 信号も無視した」。あ、それは2番か。「頸静脈も切ったし」…「だけど死ななかった、死にゃしなかった」(「NOT DEAD LUNA」)とか。もともと「死にたい死にたい死にたい」みたいにダイレクトにいうことは私自身も抵抗あったけど、バンド内であんまり許されなくて、モチーフを持ってきていい換えて何とか入ってた。それも今は禁止ですよ。死にたいとか病気系は禁止。だからそれを思いっきりやれているっていうのは...しかもストレートに、しかも何回も繰り返し、しかも1曲に限らず(笑)。 
私ね、「わかってるんだって。死にたい死にたいっていう人ほど長生きするっていうのはわかってるんだよ、自分でも」って、人にいう時にはそういってきたわけ。

 

の子 はあ。

 

戸川 でもここだけの話、本当にはそう思ってないの。もしかしたら死んじゃうかもしれないと思ってんの。人にいう時には笑われるから「わかってるんだって」っていうことにしてるわけ。それで「死にたいよ」っていいたくなるその時の気持ちがね、頭にその言葉が浮かぶ時、鳴ってる音楽はあれだ、みたいな感じがしたんですよ。うん。

 

の子 ……。

 

戸川 あれが鳴ってる。 

 

の子 はい。 

 

戸川 だから感動したって言ったんですよ。

 

の子 ……はい。

 

戸川 戸川純バンドでは「オープン・ダ・ドー」っていうひきこもりの曲をやってるんですけど、とにかくかまってちゃんでいちばん驚いたのは「死にたい」というストレートな四文字を...。勇気あるなと思いましたね。 

 

の子 あ、いやー。やっぱり書いてる時は無我夢中なんですよ。自分のために書いてるんで。あの時はあの時の状況だったから、勇気があったとかっていうのではないですね。「死ね」とかも書いてるけど。

 

戸川 衝動と行動というものがあって、ぎりぎりのものがあって、衝動でそういう行動に出た、みたいのがあって、衝動と行動っていうのはくっついてるようなものじゃないですか?別個のものだけど。私はその間で、ほんっとに疲れた。衝動をなんとか抑えた、みたいなことが細かいことでもあったりして。でも『つまんね』とか『みんな死ね』とか、あんまりそういう狭間で苦しんでるような気がしないんだけど。

 

の子 ああ。いや、『みんな死ね』の時には苦しんでましたね。

 

戸川 ああ、そう。じゃあ、衝動?

 

の子 衝動なんですけど、『みんな死ね』って付けた時はやることがたくさんありすぎて、頭の中がわぁーっとなって「みんな、死ね!」ってメールしたりして...じゃあこれをタイトルにするか、みたいな。『つまんね』はけっこう落ち着いてつけたんですけど。

 

戸川 自己破壊衝動というよりも、 どっちかっていうと普通の破壊衝動みたいな?

 

の子 そうなんです。とりあえずはパニックになってた感じですね。

 

戸川 でもあのメロディがあるから、ただの叫びでもね、成立の仕方はしっかりしてるんですよね。いわゆるパンク的な衝動でやった、みたいじゃないですもんね。

 

戸川 さっき、私の声が可愛くなったり狂気になったりっていってくださったけど、ご自身はたしかに普通に歌っている時とシャウトしている時は違いますね。そこが共通項なのかなとも思ったけど、その前に、私は聴いててジョニー・ロットン的なものを感じましたけど。私というより。

 

の子 ピストルズは好きですけど...十代の時に聴いてました。戸川さんがピストルズを聴いたのはたしか高校生の時ですよね。 それでゲルニカやり始めたんですか?

 

戸川 “それ”でロックやってる人と知り合うようになったの。それまではロックは嫌いで、懐メロとクラシックが好きだったので、パンクをやってる人と友だちになれて、それを入り口に初めてロックというジャンルを聴いた。ゲルニカは「パンク卒業!」みたいなユニットだったんです。私はパンクやらないで「卒業」をやってた。で、ゲルニカをやめた時に「次はロック・バンドをやります」っていったら「えー!」ってインタヴュアーの人みんなにいわれた。せっかくゲルニカやったのにもったいないとか。でもゲルニカほどコンセプチュアルなユニットっていうのはできないから、バンドはいちばんてっとり早いと。 

 

の子 はい、てっとり早い!

 

戸川 ええ。今さらバンドやってもがっかりされるのがオチだぞとか。でも私は「確かにそうかも知れないけど、一枚だけ出したいんだ」って。 それがこんにちにつながってるというか。

 

の子 なるほど。

 

戸川 そう。バンドやってよかったなあ。

 

の子 僕の中の情報だけだと時代がいろいろ食い違っていると思うんですけど、女優があったり、CMに出たりというものあって。 僕は『刑事ヨロシク』を見たんです。

 

戸川 へええ。 

 

の子 あれはツタヤで借りられたんで。戸川さんの役がオツヤで、ビートたけしにやけに厳しいツッコミをされている。で、やっぱり可愛かった。単純にそういう魔力というかありますよね、僕には。歌を聴いて、人間に入っていって、動いてるところを見たい!ってツタヤでレンタルして、あ、可愛い!って。

 

戸川 ははははは。 今はちょうどこんなになっちゃってる時だけど...。でも痩せますけどね。そう、「可愛い」っていわれてよかったあ(笑)。がっかりっていわれたらどうしようと思ってた。

 

の子 (笑)ええ、最後に踊ってるところとか、「可愛い!」って。

 

―――戸川さんはロック以前は懐メロとクラシックだったということ ですが、の子さんは?

 

の子 それはもうポピュラー音楽全般で、ただ単にメロディがいいものを。

 

戸川 あ、やっぱりこだわってたんだ。

 

の子 そうですね。 僕はビートルズが好きなんで、やっぱりメロディを吸収してっていう感じですね。

 

―――戸川さんはビートルズは聴きましたか?

 

戸川 ないですね。 「カム・トゥギャザー」だけは好きだったけど。それはね、中学の給食の時間に流れるテーマ曲だったの。

 

の子 そういうのいいですね。

 

戸川 私は向こうの懐メロも好きだったの。だからフィフティーズは好きでしたよ。若い頃のエルヴィス・プレスリーとか。ビートルズも初期、「シェケナベイベー!」の頃。 つまり「ツイスト・アンド・シャウト」ね。ああいう「エルヴィスが好きで始めました」みたいな頃のビートルズは好き。

 

の子 「ツイスト・アンド・シャウト」、僕、大好きです。エルビスはこんな感じ(水平)で通ったり、いろいろ聴きましたけど、十代の頃は洋楽より邦楽を聴いてたんで。高校をドロップアウトしてニートとかいろいろやってさまよってましたね。さまよってさまよって、日本のアンダーグラウンド的なものも含めて好きになっていった。そういう時期に戸川さんのこともフィットしたんでしょうね。

 

戸川 ヤプーズは初期からコンピュータ使ってやってたんですよ。当時は一人一台、大きいのをどんどんどんと置いてチャカチャカやってたんです。だから、それも腑に落ちる、みたいな。 

 

の子 ふふふ。これからも使っていきますか? 

 

戸川 ヤプーズはね。でも私はこんな体になったからヤプーズはやりたくてもしばらくできない。だから今はコンピュータ使わない範囲のことをやってますね。 

 

―――先週のライブで「夢見る約束」をバンドアレンジでやってましたね。

 

戸川 そうそうそう。あれは本当はピコピコでやりたかったんだけどね。

 

の子 僕もピコピコを入れたくて。

 

戸川 うん。同期もん。

 

の子 でも何回も失敗してますから。

 

戸川 合わなくなるからね。

 

の子 それで「やっべ、 やっべー」 と思って、ごまかしながら機材を蹴るんです(笑)。蹴って「はい終わり」っていうのはいっぱいありました。まあ僕らはこんなバンドなんでごまかしは全然効きますけど、戸川さんのはそうはいきませんよね。

 

戸川 うん。もう困りますね。どっかで辻褄合わせて私がそっちに合わせにいくしかない。そういうごまかし方ですね。 

 

の子 へえ、すごいですね。それは。

 

戸川 いえいえ。ぜんぜん手に負えなかった時もありますよ。ボックスの特典映像に『ヤプーズ計画』全曲のライヴ・ヴァージョンを入れたんですけど、「キスを」だけは入っていないんですよ。それはもうもうドミノ倒しでズレていって、ごまかしができなかった。 ヤプーズはコンピュータなしではできないことをやってきたんです。 

 

―――でもかまってちゃんのはそういうコンピュータとはちょっと違うんだよね?

 

の子 ふふふ。ははは。

 

戸川 いや、形態はぜんぜん違いますよ。彼の場合はもう体の一部だと思いますんで。私がこれをいったのは、 ヤプーズの初期って、みんながみんなコンピュータを使っていたわけじゃなくて、でもうちはけっこう使っていた方だったので、そういう意味で接点があるかなと。

 

―――こういうツールがなければ神聖かまってちゃんの表現も変わると思いますか?

 

の子 そうですね。

 

戸川 それは全然変わるんでしょうね。神聖かまってちゃんの活動内容も当然変わると思うし、頻度も、サウンドも変わるんじゃないかと思いますね。あの音圧とミックスはコンピュータがなかったらできませんからね。あれだけの音圧、音圧感はフルオーケストラでも難しいと思うよ。しかもあれだけ詰め込んでもちゃんと分かれて聴こえる。

 

の子 戸川さんから音圧という言葉が出てくるとは思わなかった。

 

戸川 そうっすか(笑)。

 

の子 (笑)ええ。

 

戸川 どういう人か知り、っていう中に、また知らないことが加わったということで。

 

の子 はははは。 

 

戸川 すいません。 ちょっと休憩。

 

―――(戸川休憩中)こないだガーデンのイベントに戸川さんと一緒に出てましたよね。

 

の子 僕はあの時点でも舞い上がってたんですよ。それがまさか...ワーオですね(笑)。ワーオ!ですよ。ここ (VAIOのフタ)にサイン書いてほしいな、でっかく。...もう頭真っ白になっちゃいました。

 

―――そうですか?

 

の子 当たり前じゃないですか!「ファンです」なんていわれるなんて、この喜ばしさは...。なんかテンパッてて。

 

―――そうは見えないですね。

 

の子 いや、かなりテンパってます。なんか俺、泣いちゃいそう。

 

戸川 休憩終わり。ごめんね。

 

の子 はははは、はあはあ。思いっきり、サインもらう準備してました。

 

―――もらったら、今度は壊せないですね。

 

の子 わかんないですよ。

 

―――わかんないのか。

 

の子 なんかまったりと暖かくなってきましたね。

 

戸川 暑いっすね。 

 

の子 暑い!

 

―――彼は今、見えてる以上にテンパッてるらしいですから。ところで戸川さんは神聖かまってちゃんというバンド名はどう思いました?

 

の子 え!どう思いましたって。はっはっはっは。だめですよ。

 

戸川 いやー、意外ですよ。あの音源は、名前からは。

 

―――もっと違うものを想像した?

 

戸川 想像できなかった。 で、聴いたら超好きなモノだからびっくりした。

 

の子 へ。へへへへへ。ははははは。

 

戸川 自分より下の世代の人で、いっきなりファンになった、そういうサウンドが次から次へ来るとは思わなかったですね。

 

の子 あ、いや、ばばば...。

 

戸川 どういうところから付けたんですか?

 

の子 あ、や、ああ。ちょっと個人的にも宗教チックな聖な感じのものが好きというのもあったんで、音楽にもそういうのをちょっと挟んだりしてるんですけど、そういった意味合いも含めて、かつ、その時は高円寺でライヴしてたんですけど、ちょっとぐちゃぐちゃしてたんですね。いろいろと暴れるような。それで怒られたりしてたんです。で、「でも 僕らは“かまってちゃん"ですから」 みたいなことをいってたんです。 

 

戸川 (笑)“かまってちゃん”だからいいじゃん、みたいなね。

 

の子 あ、いや、全然よくはなんなかったですけどね。

 

戸川 私ね、もうひとつ好きな要素があるんだけど。メッセージ色がないでしょ、歌で世界を変えようみたいな。 

 

の子 ははははは。 歌で世界を、それは全然ないです(笑)。曲作る時は自分の気分の浮き沈みが激しいんで、自分のためなんですよね。それを緩和するというか。曲作ってる時とかはガーって自分だけになって。

 

戸川 いやー、私も同じような感じだから。 

 

の子 ですよね。「ですよね」とか俺がいうのもナンですが。

 

戸川 いやいやほんとに。真面目にやってる人をどうこういうつもりはないんですよ。ムリムリ、なんてことは思ってもいないし。でも私はまるっきりその気がなくて...。 

 

の子 ははははは。おかしい。そう。

 

戸川 うん。ベースでリーダーの中原に今日の対談の話をしたら、ギターでIT会社の社長でもある戸田ちゃんに「神聖かまってちゃんっていうバンドがあって、一緒にやったら 面白いんじゃないかと思うよって純ちゃんにいっといて」っていわれてたんだっていわれたの。

 

の子 へえーーー。 そうなんですか。へえー。へえー。 

 

戸川 私は昔、なんとか一派、YMOファミリーとかSOBUサウンド(笑)とかって括られることが多かったの。でもどこにも属したくないっていうのがあって、ヤプーズは前座も立てずに前座もしないでやっていこうっていってたの。一回騙されて前座にされたことがあったけど。でも一緒にやりたいな、やらせてもらいたいなって思う。

 

の子 え。そんな...。 

 

戸川 だから、腰治して痩せます!

 

の子 そうですね、まず。いや、光栄です。今日は戸川さんに会えたらそれだけでいいと思っていたのに、こんな・・・。ほんとにありがとうございます。

 

―――楽しみにしています。 ではこの辺で...。

 

の子 あ、俺、サイン貰いたいんです。ここ(VAIOのフタ)に。 

 

戸川 え、そんな大事なところに...。

 

の子 あ、いや、ああ、ほんとにうれしいです。 

 

(かくてサイン会へ突入)

 


 

◎戸川純

61年生まれ。歌手。ゲルニカ、ヤプーズを経て、現在は戸川純バンドでライヴ活動を行う。『玉姫様』、アポジー&ペリジー名義の『超時空コロダスタン旅行記』『極東慰安唱歌』など、傑作多数。女優としての活動歴も多彩。

 

◎の子

mono(Key)、みさこ(Dr)、ちばぎん(B)との神聖かまってちゃんのヴォーカル&ギター。08年にバンド結成後、インターネットを中心に話題を集め、2010年3月に『友達を殺してまで。』でデビュー。